利益を増やしたいと考えたとき、多くの企業は売上を増やすことや、経費を削減することに目を向けます。
もちろん、それらも重要です。
しかし私たちは、利益改善に取り組むのであれば、最初に手を付けるべき数字は「原価」だと考えています。
なぜなら、原価は会社の利益構造を決める重要な数字だからです。
ただし、ここでいう原価管理とは、単純に原価を下げることではありません。
商品ごとの原価を正しく計算し、それぞれの商品がどれだけの利益を生み出せるのかを理解すること。
これが収益コントロールの出発点です。
原価は商品ごとに計算して初めて意味を持つ
売上高から原価を差し引いたものを「売上総利益」、一般的には「粗利益」と呼びます。
会社全体の売上総利益を把握することも必要ですが、それだけでは具体的な経営判断にはつながりません。
本当に重要なのは、
商品ごとに原価と売上総利益を把握すること
です。
同じ売上高の商品でも、大きな利益を生み出している商品もあれば、ほとんど利益が残らない商品もあります。
中には、よく売れているにもかかわらず、原価や値引きの影響によって十分な利益を生み出せていない商品もあります。
会社全体の数字だけを見ていると、こうした商品の違いは埋もれてしまいます。
商品ごとの原価を正しく計算して初めて、
- どの商品が利益を生み出しているのか
- どの商品が会社全体の利益を支えているのか
- どの商品が売れている割に利益を残していないのか
- どの商品を改善すべきなのか
が見えるようになります。
売上総利益は会社のHP(ヒットポイント)
私たちは売上総利益を、
会社のHP(ヒットポイント)
と定義しています。
ゲームでは、HPがなくなるとキャラクターは戦い続けられません。
会社も同じです。
商品を販売すると、まず売上高から原価が差し引かれます。
その時点で残る売上総利益が、その商品が持つ最初のHPです。
その後、会社はさまざまな費用という攻撃を受けます。
人件費。
物流費。
広告宣伝費。
販売促進費。
システム費。
管理費。
こうした費用が発生するたびにHPは減っていき、最後まで残ったものが会社の利益になります。
つまり、会社が継続して活動し、次の投資を行うためには、最初に十分なHPを確保しておく必要があります。
商品ごとにHPの大きさは異なる
会社全体にHPがあるように、商品ごとにも異なるHPがあります。
同じ価格で販売していても、原価が異なればHPは変わります。
同じ商品でも、販売価格や値引き率が異なれば、残るHPは変わります。
例えば、売上高が大きい人気商品であっても、原価が高く、大幅な値引きが常態化していれば、実際のHPは極端に小さいかもしれません。
反対に、販売数量は少なくても、高い付加価値が認められ、十分な売上総利益を確保できている商品は、大きなHPを持っています。
売上ランキングだけでは、この違いは分かりません。
商品ごとの原価を計算し、商品ごとのHPを見えるようにすることで、初めて本当の収益性を判断できます。
原価を下げることが目的ではない
原価管理というと、仕入価格を下げる、材料費を削減する、製造工程を効率化するといった、コスト削減を想像する方が多いかもしれません。
しかし、私たちは原価をできるだけ下げることだけが正解だとは考えていません。
品質を維持するために必要な原価があります。
顧客満足を高めるために必要な原価があります。
商品の価値を維持し、競争力を高めるために欠かせない原価もあります。
大切なのは、原価の金額そのものを一律に削減することではありません。
その原価によって、どれだけの価値と利益が生まれているのかを理解することです。
そのためには、商品ごとの原価とHPを正しく把握しなければなりません。
商品ごとの「残りHP」まで見る
商品ごとの売上総利益が分かったら、さらにその先を見る必要があります。
販売するために必要となった物流費。
広告や販売促進に使った費用。
営業活動にかかった費用。
その他、その商品に関連して発生した費用。
これらを商品ごとに充当すると、売上総利益からさらにHPが減っていきます。
その結果、商品ごとの「残りHP」が見えてきます。
売上総利益の段階では十分に利益があるように見えても、物流費や販促費まで含めると、ほとんど利益が残っていない商品もあります。
商品ごとの原価だけでなく、最終的にどれだけのHPが残っているかを把握することで、その商品の本当の収益性が分かります。
原価計算は利益を生み出すために行う
原価を計算する目的は、会計処理を行うことだけではありません。
利益を生み出す商品を見つける。
利益が失われている商品を発見する。
商品の改善点を考える。
限られた人材や資金を、どの商品へ投資するかを判断する。
このように、原価は次の経営判断につなげるために計算するものです。
原価の把握をゴールにしてはいけません。
商品ごとのHPを把握し、利益を増やす具体的な行動へつなげることが、本来の原価管理です。
原価が分かったら、販売単価に立ち返る
商品ごとの原価とHPが見えるようになると、次に確認すべき数字は販売単価です。
特に注意すべきなのは、販売数量が多いにもかかわらず、HPが極端に小さい商品です。
人気商品だから利益が出ているとは限りません。
よく売れていても、販売単価が低すぎたり、値引きが多かったりすれば、会社に十分な利益を残していない可能性があります。
原価を正しく把握した後は、
- 現在の販売単価は適正なのか
- 値引きが利益を大きく削っていないか
- 提供している価値に対して価格が低すぎないか
- 人気商品だからこそ価格を見直せないか
といった視点で、単価に立ち返ることが重要です。
近年は、原材料費、人件費、物流費などの上昇を背景に、多くの企業が価格改定を行っています。
以前と比べると、消費者や取引先にも値上げの必要性が理解されやすく、企業が販売単価を見直しやすい市場環境になっています。
この環境を踏まえ、原価とHPを正しく把握した企業は、次に商品の価格戦略を練り直すべきです。
まとめ
利益改善は、商品ごとの原価を正しく把握することから始まります。
しかし、目的は原価を一律に削減することではありません。
商品ごとの原価を計算する。
商品ごとのHPを把握する。
費用を差し引いた残りHPまで確認する。
利益を生み出している商品と、利益を失っている商品を見極める。
この流れによって、原価の数字が経営判断に使える情報へ変わります。
原価は、削減するためだけに計算するものではありません。
利益を生み出す商品を見つけ、育てるために計算するものです。
そして原価とHPを把握した後は、販売単価へ立ち返る必要があります。
特に、人気があるにもかかわらずHPが極端に低い商品については、現在の市場環境も踏まえ、値上げを含む価格の見直しを積極的に検討すべきです。
次回の「その②」では、原価を把握した後に行うべき価格戦略について、値上げ、値引き、付加価値、販売数量との関係から具体的に考えていきます。